糖尿病の人は認知症になりやすいって本当ですか?(月刊糖尿病ライフ さかえ)

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【回答】認知症も、糖尿病や高血圧などと同じく遺伝的原因(生まれつきの病気のなりやすさ)に、環境要因(食事・運動・ストレスなど)が加わって発症することが分かってきました。その環境要因として、糖尿病が関係あるのかということがお尋ねの内容ですね。

 年をとるとともに誰でも物忘れをするようになりますが、日常生活で問題が起きることはまれです。なぜなら、人から指摘されたり、自分で気が付いたりして、「思い出す」ことができ、起こってしまった事態に対応することができるからです。しかしながら、指摘されても思い出すことができず、社会生活に支障を来すようになると、「病的な物忘れ」ということになります。この「病的な物忘れ」の中に認知症があります。認知症になると、薬を飲み忘れたり、食事療法が守れなくなったりして糖尿病治療にも多くの問題が起きてきます。

■ 糖尿病と認知症
 認知症には幾つもの種類がありますが、今回は最も知られていて、患者さんの数も多いアルツハイマー型認知症を中心にお示しします。

 アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβ(ベータ)やタウと呼ばれる特殊なたんぱく質がたまり、神経細胞が壊れて減っていくことで起こると考えられています。この認知症の発症には、糖尿病状態が関係している可能性が報告されています。

 日本においては、福岡県久山町住民における研究で糖尿病や糖尿病予備群の方は、アルツハイマー型認知症になりやすいことが示されて注目されました。その他にも、さまざまな調査で、糖尿病になってからの期間が長いこと、血糖コントロールがわるいこと、食後血糖値が高いこと、血糖値の変動が大きいこと、インスリン抵抗性(インスリンの効きにくさ)が高いこと、また、自分で処置できないような重症な低血糖を繰り返すなどが要因となり、認知症発症の危険性が増加することが分かってきました。

■ 認知症の危険性がある人
 ここまで読んできて、不安になった方もおられると思います。しかし、知っておいていただきたいことは、糖尿病をおもちの方だけが認知症になるのではないということです。

 実は、他にも数えきれないほどの認知症の発症と関係する原因(危険因子)が報告されています。例えば、いつも気分が優れないうつ傾向をもつ方や頭部に外傷を受けた方はリスクが高く、また、引きこもりなどの不活動や対人交流の低下、そして喫煙(受動喫煙を含む)なども原因と考えられています。さらに、糖尿病以外の生活習慣病である高血圧・脂質異常症なども認知症の発症を増やすという報告がされています。

■ 認知症の予防のためには
 それでは、認知症の発症を予防するもの(保護因子)にはどんなものがあるのでしょうか。抗酸化作用の高い食物(ビタミンE、ビタミンC、βカロチン、ポリフェノールなどを多く含むもの)の摂取は予防に効果があることが報告されています。

 その他には、適度な飲酒、活動的なライフスタイル(身体活動、社会参加、対人交流が多いことなど)、高等教育などが挙げられています。

■ 予防と治療
 このようにみてみますと、認知症も心筋梗塞や脳卒中と同じく生活習慣病の合併症のように思えてきます。では、認知症も他の合併症と同じように食事・運動療法によって予防できるのでしょうか。残念ながら、「このようにすれば認知症にはならない」という方法はまだ分かっていません。そのため、現在のところ前述した発症を予防する保護因子を積極的に生活に取り入れていくことが認知症になる可能性を低くするばかりではなく、心筋梗塞や脳梗塞、がんなどのリスクも減らすと考えて、広い意味での健康維持として取り組んでいくのがよさそうです。

 認知症の治療薬も開発がどんどん進んでいます。現在でもアルツハイマー型認知症に対する治療薬は、早期から投与することで症状の進行を緩やかにするという報告もあるので、早期発見が重要になってきます。少しでも不安になったら、かかりつけ医に相談してみましょう。認知症に対してさらに高い専門知識を持った認知症サポート医も増えてきましたので、安心して相談し、治療を受けることができるようになってきました。

■まとめ
 65歳以上の約15%が認知症で、軽度認知障害(認知症予備群)も同じくらいいると考えられており、併せると約800万人と、「身近な病気」になりつつあります。早めの発見・治療が重要なことは認知症も同じです。発症・進展の予防のために適切な療養生活を続けながら定期的な検査を受けるようにしましょう。

福岡大学筑紫病院
内分泌・糖尿病内科 教授
小林邦久(こばやし・くにひさ)

※『月刊糖尿病ライフさかえ 2018年6月号』より

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