ICTやネットを活用 いまどきの人材獲得戦略とは(福祉新聞)

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出典元: 複数の法人の職員が並ぶブース

福祉現場での慢性的な人手不足に歯止めがかからない。外国人労働者の受け入れも話題だが、それですべてが解決するわけでもない。そんな中、人材獲得に向け、福祉業界のイメージアップに取り組む事例を紹介する。

 「福祉は人生に寄り添う仕事です」――。

 7月上旬、熊本学園大学(熊本市)。県内の大学生らを前に、県内8法人の福祉施設で働く若手職員が、仕事のやりがいをアピールした。

 音楽や照明にもこだわり、映像も活用。数カ月前から準備を重ねたという登壇者が身振り手振りを交えてエピソードをプレゼンすると、中には涙する学生もいた。

 別会場では就職相談会を実施した。一般的な説明会と異なり、「キャリアアップ」「福利厚生」などのテーマごとにブースを設営。学生の質問に対して、複数の法人職員がそれぞれ異なる答えを示していく。

 参加した大学4年生は「福祉系学部に行っていても就職活動では一般企業と迷う。今日は現場のリアルが分かってよかった」と話していた。

 複数の法人でイベントを開いた理由は、現場が持つ危機感だ。

 発起人の社会福祉法人リデルライトホーム(熊本市)の木村准治・事務部長は「ここ数年、新卒採用は本当に難しい。だからこそ公益性を備える法人が結集し、新しい広報手段で福祉の魅力を発信したかった」と語る。

 予算をかけないことも特徴だ。参加費は1法人1万円。ほとんどパンフレットの印刷代で、映像も自分たちで制作している。

 大学側もこうした動きを歓迎する。黒木邦弘・熊本学園大准教授は「どうしても学生は実習先だけを見て福祉現場を判断しがち。自分に合う職場もあることを知ってもらいたかった」と話す。

 実際、今回のイベントにより、一般企業から福祉現場へ就職先を変更したいと言う学生も出てきたという。木村事務部長は「今後は高校や専門学校とも連携するなど規模拡大を目指す。できることは何でもやる覚悟を持たなければ、よい人材は採れない時代だ」と意気込む。

            ◇

 「最新のICT(情報通信技術)を活用することで、福祉現場のマイナスイメージを払拭できる」。こう強調するのは社会福祉法人八生会(静岡県)の大場清弘・本部長だ。

 八生会は4月から、(株)ブルーエージェンシーが開発した、求職者とスマホで面接できるアプリ「インタビューメーカー」を導入した。利用料は月3万9800円から。応募や面接の日程調整などの機能も追加できる。

 導入した理由は、業務の効率化だ。八生会への応募者は年間200人で、中には遠方で就業中の人もいる。そのため、面接の日程調整だけでも労力が大きかったという。

 開始から5カ月で40人の面接を実施。録画機能があるので上司が後から面接内容を確認するなど、機能をフル活用している。

 大場本部長は「ウェブを介すからこそ応募者はリラックスでき、人柄もよく見える。当初の不安は杞憂に過ぎなかった」と指摘。「他社が使っていない機器を活用することは、法人の柔軟性をアピールすることにつながる。実際に採用にかかる業務量も減り、若者の採用率がアップした」と効果を語る。

 インターネットを使って法人の情報を発信し、人材獲得につなげる例もある。社会福祉法人洗心福祉会(三重県)は3年前からホームページで、毎日2~6記事を更新。7月には月10万回の閲覧を記録するなどメディアとしての地位を確立しつつある。

 もともとはホームページのリニューアルにあたり、魅力ある職場だとアピールしようと始めた。事業所ごとの日々の活動に加え、職員が好きな飲食店の紹介や、施設長が趣味でマラソンに挑戦する様子などを掲載。これまでで1番アクセスが多かったのは、職員が料理を作って紹介するコーナーだという。福祉関連施策などを解説する記事も載せている。

 同法人経営企画室の福田稔さんは「特に若者はホームページの記事を見て応募してくることが多い。コツコツと記事を更新することで人材獲得につながる実感がある」と振り返る。また「記事が職員間で話題になり、コミュニケーションが活発になる副産物もある」と話す。今後は動画制作にも力を入れるという。

 人材獲得に特効薬はない。地道な取り組みを続けることこそが大切と言えそうだ。

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