市町村に「福祉署」を 学術会議分科会がソーシャルワーク強化を提言(福祉新聞)

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出典元: 日本学術会議

日本学術会議社会学委員会社会福祉学分科会(委員長=岩崎晋也・法政大教授)は13日、ひとり親やひきこもりの若者など、社会的つながりが弱い人への支援の在り方について提言をまとめた。市町村に社会福祉士など専門職を配置した独立機関「福祉署(仮称)」を創設することを求めた。ソーシャルワーク(SW)が機能するためには、予算や行政機関を再編成し、縦割り制度の弊害を解消することが不可欠と判断した。

 同分科会は、人間関係が希薄な人は年齢や障害の有無に関係なく存在し、今後も増えると想定。それは個人のライフスタイルの問題ではなく、社会問題だとした。「福祉制度は職場や家庭に帰属した人を前提としてきたが、今、その前提は崩れている」(岩崎委員長)とみる。

 年齢などの属性によって類型化された福祉制度では対応しきれないとする指摘はかねてあり、今年4月施行の改正社会福祉法は「包括的な相談支援体制の構築」「地域福祉計画の策定」を市町村の努力義務とした。しかし、同分科会はそれでは不十分だとしてテコ入れを求めた。

 その一つが福祉署(仮称)の創設だ。福祉事務所、児童相談所、保健所などの機能を再編成した緊急支援の第一線機関とし、消防署のように市町村に設置する。公務員として社会福祉士、保健師、介護支援専門員などを配置する。

 コミュニティーソーシャルワーカーを日常生活圏域(中学校区)ごとに計1万人配置することも提言した。孤立した人が抱える問題を見落とさないよう訪問型の支援を継続的に行い、関係機関との間を調整する専門職として期待を寄せる。

 また、こうした人材が機能するには、国が必要な財源を用意し制度化することが重要だと指摘。高齢者、障害者、子どもなど属性ごとの国の補助金について、柔軟に再編成する権限を市町村に持たせるよう求めた。

 提言は政府の「ニッポン1億総活躍プラン」(2016年6月2日閣議決定)に明記された「地域共生社会」と方向性は同じ。一連の法令改正については一定の評価をしつつ「政府や自治体の責任が不明確だ。また、地域の助け合いには限界がある」とした。

 なお、総務省の研究会も共生社会を目指す観点から今年7月、民間サービスを活用して住民の生活ニーズに応えるには、ソーシャルワーカーが組織的に仲介する機能が必要だと報告。地方自治の視点からSW機能の強化を求めた。

 日本学術会議は人文・社会科学、自然科学の全分野84万人の科学者を代表する機関で、政府に政策提言する機能を持つ。同分科会は来年1月14日、提言の内容を議論するシンポジウムを日本学術会議講堂(東京都港区)で開く予定だ。

【提言の骨子】
・コミュニティーソーシャルワーカーを1万人配置する

・縦割りの福祉予算を市町村が再編成できるようにする

・福祉行政や保健所を再編成して「福祉署」を創設する

・市町村に地域福祉計画の策定を義務付ける

・障害者差別解消法の「合理的配慮」の対象を広げる

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